裁判傍聴記の序章からのつづきです。
証人たちが証言台に立ちます。
◇証人として被害者本人が登場
この事件は被告人も若いですが、被害者もやはり若者です。
被告2人を前にしても冷静に努め証言台の前に立ちます。
証言台の前では、誰もが最初に「本当のことを述べる」ことを宣誓します。
被害者は、いわれなき恐怖を味わったこと。
携帯電話が破損し、1000件以上の顧客情報が飛んでしまったこと。
また暴行を受けた個所の髪の毛が何か月か生えてこなかったことなど、被害のあったその日を振り返りながら、検察官、弁護士、裁判官のそれぞれの質問に答えていました。
◇被害者証人に対して、女性検事から尋問
女性検事が終始こだわるのは強盗致傷の共同正犯です。
強盗に計画性があるかどうか、それはそれほど関係がなくその場の雰囲気でなんとなくでもそうした意識が醸成されていれば共同強盗の要件だ、との資料を片手に主張。
被害者には、強盗共同正犯の心証を裁判員たちに形成させようと、微妙な言い回しで被害者に誘導的質問を投げかけます。
そのとき!
◇意義あり!
そうした微妙な質問に対して、
「意義あり!少し誘導している。」との大きな声が弁護士から飛びます。
女性検事は、一瞬「はあっ?なにを?」」という表情を浮かべます。
「何を言っとるの?」意義あり弁護士に対して、言葉には表しませんが鋭い眼差しを向けます。
しかし、裁判長の「意義」を認める発言に、すぐに気を取り直して「わかりました」と
質問内容を少し代えます。そのあたり、わたしがいうのもなんですが、さすがにプロフェッショナルという感じです。
◇被告人証言
被告人にはそれぞれの生い立ちや仕事の話、過去に酒で失敗がないかなど質問されます。
ここで、面白いシーンに出会います。いろいろ証拠を提示されて被告人Aが質問を受けているのですが、その証拠映像が例のディスプレイに投影されていませんでした。すなわち傍聴人たちは、証拠映像を確認できない状態だったのです。
それに気が付いた被告Aが、おもむろに
「これはスクリーンに流れないですか?」と裁判長に逆質問。
裁判長が「なにか不都合でも?」との問いに、
被告人Aは「傍聴の方たちも真実を知りたいのでは?」と返しました。
そんな言葉に裁判長はうなずいて、
なんと映像をディスプレイに映るように、裁判長が事務官に指示したのです。
この瞬間、「被告Aは若いのに結構冷静で、かつ気が付く奴やな」と思いました。周囲の傍聴人もそう思ったに違いありません。
ところで、証言者は他にも被告人の身内の人たちが代わる代わる証言台に立たれました。もちろん、ここまで至るのにそれなりに日数をかかりました。証言者たちの質問だけで都合で3日間費やしたと思います。それでも、わたしも取材を続けます。
◇予告
次回はいよいよ論告求刑です。
お見逃しなく。